2007/03/23 (金)
●第一回健康科学大学卒業式 健康科学大学一期生の卒業式が平成19年3月23日(金)勝山ふれあいセンター会場で行われました。
【卒業式学長告辞】 春たけなわの本日、ここに健康科学大学第一期生、理学療法学科95名、作業療法学科76名、福祉心理学科62名、計233名の諸君が健康科学大学での研鑽を終え、社会に巣立っていく第一回目の卒業式が挙行されますことは、私を始め本学に関係のあるすべての人々にとって、極めて大きな喜びであります。諸君が志を立て、燃える希望に身を包んで入学されたのはつい先年のことでありましたが、その間諸君は勉学に、課外活動に青春の情熱を燃やして大きく成長され、本日ここに栄えある卒業の日を迎えられました。卒業生諸君ご卒業おめでとう。また本日の卒業を千秋の思いで待っておられたご父兄、ご家族の皆様のお喜びも、いかばかりかと推察いたします。 諸君はわが健康科学大学で多くのことを学ばれました。しかしそれらは、これからの発展の基礎を身につけたという意味であり、世の中に出て本当に必要なことは、これからのどんな変化にも柔軟に対応し、適応できる能力と姿勢を身につけることであります。めでたい本日の卒業式も、考えてみれば諸君の人生のほんの一時点での出来事にすぎません。これからが本当の人生の始まりというべきで、本日はその出発の日であることに先ず思いを致して下さい。 卒業という言葉は英語では、commencementといいますが、この言葉には同時に物事を始めるという意味があり、まさに卒業とはこれからの生涯の勉強を始める出発点、という意味を持っているのであります。諸君が今大学を優秀な成績で卒業しても、これからの生涯の勉強や努力がなければ、数年で人生の落伍者になってしまうでしょう。まさに諸君の将来は生涯かけた努力と勉強にかかっているのです。 19世紀のイギリスの詩人テニソンも「人生は長い一つの学校である」と言っています。 諸君のこれから船出する社会は、激動のさなかにあります。諸君を待つ将来には想像を絶する科学、技術の進歩があり、それに対処するには絶えず人間の英知、倫理を働かせてコントロールする必要があります。将来人類は、無限に便利さと快適さを求めて破滅に向かうか、あるいは自然と共存する生物の時代に戻るか、の選択を迫られるとも言われています。これまで以上に、遺伝子操作などの生命倫理問題や地球温暖化などの環境問題などが、人類存続にかかわる大きな問題になってくることは間違いありません。諸君の前途には人類が経験したことのない新しい問題が解決を求めて登場してくるのです。そんな時代にあって諸君には、毎日の平易さに埋没することなく、時代を先取りするチャレンジ精神を持って、自分自身の理性の命ずるところに従って生きて欲しいと思います。 新しい時代を生きるには、チャレンジ精神が必要であります。失敗を恐れ、絶えず従来の枠内にとどまっていてはいけません。失敗すれば、それはそれで次の発展の土台になるのです。失敗して逆境にあるときこそ、人生の飛躍するチャンスともいえるのです。ゴールドスミスは「我々の栄光は失敗しないことではなく、失敗して倒れるたびに起き上がる不屈の精神にある」と言っています。諸君もこれからの永い人生で仮に失敗があったとしても、本日私の述べた教訓を是非思い出し、何回でも新たなチャレンジ精神を持って進むことを、期待したいと思います。諸君はこれから長い人生航路に出航するのですが、人生には山あり谷ありで、いつも順風満帆というわけにはいきません。めぐり来る風雪に耐えて、諸君は大きく成長していくのです。 諸君は長い人生航路において、様々な事件に遭遇し、その対応に迫られるでありましょうが、その際の心得として、私が重要と考えているいくつかのことついて、述べたいと思います。先ず第一は、自分の使命と目標をはっきり持って、誰にも負けない努力をし、自分のやることには責任を持つという姿勢であります。第二は、思いやりのある言動に心がけ、謙虚でおごらず、自分の言動に対して常に反省する心を持つことであります。人の話を誠実に聴くという姿勢が極めて大切であります。自分の言いたいことだけを言い、人の話は効かないという態度は良くありません。第三は、すべてのことを勝ち負け、あるいは善と悪でしか判断しないという、単純な考え方はよくありません。相手の立場も考え、時には相手に花を持たせるという柔軟な態度は、人間関係を良くする上で重要な心得であります。最後に重要なことは、常に自分を磨くという努力を忘れないことであります。 さて諸君は在学中日進月歩の医療・福祉分野の技術を学び、社会に巣立つわけで、社会は諸君の今後の活躍に大きな期待を抱いております。高齢社会を迎えたわが国においては、高齢者の医療制度は大きく変貌し、急速にその体制が変革されつつあります。しかし医療・福祉制度が如何に変貌しようと、諸君の選んだ道は、益々その重要性を増すはずであります。それだけに、諸君の社会において果たすべき責務は、極めて重いものであります。諸君が学び、かかわっていく医療・福祉は、常に人類の幸福のためにある、という原点を決して忘れてはなりません。 かつて医学・医療の進歩は、そのまま人類の幸福に直結すると考えられていましたが、医学・医療の進歩は、人の尊厳にかかわる様々な問題を引き起こし、21世紀は心のケアが叫ばれる時代となりました。医学・医療とは本来サイエンスとヒューマニズムを調和させた一つのアートでありますが、サイエンスの部分のみが急速に進歩し、人間そのものを全人的に診ると言うヒューマニズムの部分が失われてしまったからであります。私は諸君が入学された4年前の入学式の告辞で「諸君にはヒトの心の痛みがわかる人になって欲しい」ということを最初に申し上げましたが、同じ事を卒業の今日、再び繰り返し強調したいと思います。医療・福祉の世界で生きていく上での心得として重要なことは、まず第一に、人の気持ちを読み取り、心配りをするという心がけであります。キリストは「己の愛するところを人に施せ」と言っていますし、孔子も「己の欲せざるところ人に施すなかれ」と言っております。 次に必要な心がけは、人を見る眼と物をしっかり見極める眼を養うことであります。その際人の短所は見ないで、長所を見るように心がけるべきだと思います。医療・福祉は、それそれ専門領域の異なる人々が、互いに協力しながら行う共同作業であります。共同作業を円滑に行なう際に最も大切なことは、他の専門職の役割をしっかりと理解し、その価値を認め、決して悪口を言わないことです。この世の中には犬と猿の間柄がいたるところに転がっていますが、性質の異なった者を受け入れる雅量、度量、心の広さを持つことが極めて重要であります。実社会では勿論のこと、医療・福祉の分野では、特にお互いの協調が重要であります。人の和の大切さを常に忘れないで欲しいと思います。 最後に申し上げたいことは、諸君が学ばれたのはわが健康科学大学であるということであります。地域の大学は、地域の諸問題に対処すべき責務があります。諸君は地域と密接に結びついている実感を持って卒業され、その連帯感でお互いに結ばれていると思います。諸君がこの山梨県の地に残る場合はもちろん、日本全国の何れの地にその活動の場を求めても、富士河口湖町への愛着を忘れず、常に地域の発展に思いをはせて欲しいと思います。日本一の名峰富士山が、諸君の活躍を見守っていることを決して忘れないで下さい。どうか諸君、21世紀の社会において羽ばたいて下さい。諸君の無限の可能性に大きな期待を託して、私の告辞と致します。
2007年3月23日 健康科学大学学長 折茂 肇
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